ウエディングプランナーと経営者
毎日が文化祭、でもかまわない
- 阿部伶菜MAYA ウエディングプランナー
- 高村快人MAYA 代表
いつも「アベちゃん」と呼んでいる阿部伶菜は、昨年、自分から手を挙げて、僕たちのMAYAにやってきた。明るく、気配りができて、お客さま誰からも信頼される〝愛されキャラ〟のウエディングプランナー。
10代からサービス業を志していたという彼女が、どうしてウエディングに興味を持つようになったのか。何を夢見て、MAYAの一員になってくれたのか。そして、いまのMAYAは、働く場所としてどんなところなのか。
もはやすっかり僕らの一員である彼女と、これまでじっくり話してこなかったことを、あらためてこの機会に聞いてみた。
サービス業しか頭になかった
高村
アベちゃんがMAYAに応募したのって、去年の9月か10月だったよね。たしか、MAYAの採用公式フォームに問い合わせてくれて。
阿部
たぶん、そうだったと思います。募集要項にはキッチン担当しかなかったんですけど、「もしかして、ウエディングプランナーも募集してたりしますか?」って。
高村
そうそう、そうやって飛び込んできた。そもそも、どうしてウエディングプランナーになろうと思ったの? そういえば動機、聞いたことがなかったなぁ。
阿部
もともとは、サービス業に就きたかったんです。そう思いはじめたのは高校生の頃で、私、焼き鳥屋さんで4年間アルバイトしていたんですけど、そこの店長が私の第二のお父さんみたいな存在で。その人にいろいろと教えてもらったことで、接客というものに目覚めたというか、人と接する仕事をしたいなと思ったんです。で、高校卒業とともに「これからどうしよう?」と考えたときに、やっぱりサービス業だなと。大学もホスピタリティに特化したところがいいなと思って、ホスピタリティやツーリズムを学ぶ学科に進みました。
高村
ウエディングっていうのは、どこから?
阿部
大学に入った時点では、まだ絞ってはいなかったです。周りはほとんどの人が航空会社や旅行業界に就職したいという人たちで、先生方も元CA(キャビンアテンダント)やホテル業界の方たち。でも、私にはあまりピンとこなくて、サービス業ってほかには何があるんだろう? と探していた頃に、ウエディング会社を経営している方の本を読んで、興味を持って……それで、その会社に連絡して、バイトしはじめたのが入り口です。
高村
アベちゃんって、つくづく正面突破の人だね。
阿部
アハハ!決めるまではめちゃめちゃ時間がかかるんですけど、ひとつ「これ」って決めると、絶対にそれという感じで。とにかく現場でやりたい、そのためには、このまま学生をやっていても仕方がないと思って、親を説得して、大学をやめて仕事することにしたんです。いまから思うと、そこまでしなくてもよかったかなとは思うんですが、ウエディングは、それまで私が触れた職業の中で、いちばん衝撃を受けたものだったので……。バイトしながら、もっと違うタイプのウエディングも知りたいと思って、もうひとつ、ウエディングプランナーのアシスタントとして雇ってもらえるところを見つけたので、2つの職場を掛け持ちしていたこともありました。
高村
すごいな!そのあと、MAYAへ来る前の会社に就職したと。
阿部
はい。そこで5年、ウエディングプランナーをやりました。
計画するのが何より楽しい
高村
そこまでウエディングの仕事にハマったのって、どうしてだと思う?
阿部
うーん……たとえば、誰かの誕生日があったとして、私はそのイベントを計画するのが好きなんですよ。ウエディングプランナーになった理由も、けっこう、そういうところに通じているんじゃないかと。
高村
たしか、「文化祭が好き」って言ってたんだよね? MAYAの面接で。
阿部
私から言い出したんじゃなくて、面接してくれた人に「ここでは毎日が文化祭だよ。バタバタすることが苦手な人もいるけど、そういうのは好きですか?」って訊かれたから、「はい、好きです」って。
高村
文化祭が好きっていうのは、僕もそうかも。
阿部
カイトさんも?
高村
僕がMAYAをやりながら続けている広告の仕事も、けっこう、それに近いところがあるから。アイデアを出して、スタッフとああだこうだ言いながら動画やポスターをつくったり、イベントをやったり……締め切りやイベントの前日には徹夜もしたりして。ウエディングプランナーは、徹夜をすることはないと思うけど。
阿部
そうですね。フフフ。
高村
たしかに、文化祭は好きじゃないとね……そうか、だから僕も、MAYAでウエディングをやろうと思ったのかもしれない。アベちゃん、文化祭ではリーダーだったタイプ?
阿部
それが私、ずっとダンス部だったので。文化祭はステージのための練習があって、クラスの出しものの準備にはぜんぜん参加できなかったんですよ。
高村
え、やってないの!?
阿部
ごめんなさい(笑)。でも、側から見ていて、絶対、楽しいだろうなと思ってました。ちなみに、カイトさんって、小さい頃、何になりたかったんですか?
高村
僕? 僕の子どもの頃の夢は、寿司職人になること。そう卒業文集に書いてた。
阿部
えーっ! なんで?
高村
なんでだろう。でも、母親曰く、ずっと憧れてたらしいよ。中学を卒業したらその世界に入るんだって。でも、紆余曲折があって……なんでそんなこと訊くの?
阿部
いや、どうやったらこういう人ができあがるんだろうと思って(笑)。
感動に点数はつけられないから
高村
5年間同じ会社で仕事をして、それで転職を考えてMAYAに応募してくれたんだよね。何社か受けてたの?
阿部
そうですね。実は、もうウエディングに携わるつもりはなかったんです。別の業種で何社か受けたんですけど、それがうまく軌道に乗らなくて、それでやっぱり私はウエディングかな、と思って。ウエディング自体はずっと好きだったので、前の会社を辞めるときも、すごく迷いました。
高村
理由を訊いてもいいかな。
阿部
うーん……5年やった中で、「この式場は好きだな」とか「この演出、お客さまに合ってるな」と思えるときもあって、そういうときはすごく楽しいんですけど、やっぱり仕事だから、自分が本当にいいと思っていないことでも、要望に合わせてやらなくちゃいけない場合もあるんですよね。
高村
あるよね、それは。
阿部
それと、結婚式が終わるたびにお客さまにアンケートを取るんですけど、感動っていう、本来は測れないものに点数をつけることも、私にはいいとは思えなくて。でも、同じ業界なら、こういうことはどの会社でもあるだろうし、だったらもうウエディングはいいのかなと思って。ウエディングで応募したのは、実はMAYAだけだったんです。
高村
でも、MAYAの「結婚の日」って、けっこう特殊じゃない? ウエディング業って言っていいのかなと、僕なんかはいつも思うんだけど。
阿部
そうですね。すごく時代に逆行してる……とは、思います(笑)。
高村
ハハハ、逆行か。
阿部
なんていうか、MAYAは、結婚式を「やりたくない」人の理由を汲み取ってあげているウエディングなんだなぁと。目立ちたくないとか、自分たちのためだけに大きなお金を払うなんてとか、いろんな理由で結婚式をやりたくない人って、一定数いると思うんです。でも、親御さんたちの気持ちを考えると、やっぱりやらなきゃいけないのかなと感じている人もいる。内覧会に来られる人の中には、けっこうそういう方、多いじゃないですか。
高村
そうだね。
阿部
結婚式をやるかやらないかより、やらないか、それともMAYAでやるか……そういう感じで迷っている方、多いと思います。
考える、準備する。その時間と空間を楽しむ
高村
そういう意味では、たしかに僕らは特殊だし、ウエディング業っていう枠に収まっていないのかもしれない。でも、だったら、そういうお客さんに対して、僕らはもっとできることがあるのかもしれないよね。たとえば、いま、目立ちたくないと思う人に向けて新しいドレスの提案をしていたりするけど、ヘアスタイルとか、結婚式のやり方自体とか、もっといろんな提案ができそうな気がするなぁって、話を聞いてて思った。
阿部
そうですね。たぶん、もっともっとある気がします。
高村
ねえ、アベちゃんから見たMAYAって、どういう場所?
阿部
私目線で? うーん……(熟考)やりたいって思うことを、仕事としてやれている場所、かなぁ。うん、すごく。
高村
ああ、それはいいね。
阿部
さっきの文化祭の話でいうと、文化祭って、本番ももちろん楽しいけど、実は準備期間に、何をするかとかどうするかとか考えながらつくっているときが、いちばん楽しかったりするじゃないですか。だから私はウエディングをやりたい、プランナーになりたいと思ったわけだけど、前の職場でもそれがプランナーの醍醐味とされていながらも、やっぱり仕事としてやる件数が多かったりして、だんだんこなしていく感じになっていって……。1組のお客さまに割ける時間が少なくなるにつれて、プランナーをやっている意味がわからなくなってしまったんですよね。でも、MAYAならその時間を大事にできそうだなと思って、それで応募して。で、入ってみたら、想像以上の場所だったなぁと。
高村
いま、文化祭感ありますか。
阿部
はい。めっちゃあります。
高村
どんなときにそう感じるの?
阿部
そうですねぇ、準備の段階から……MAYAの新郎新婦様って、自分からああしたい、こうしたいって言われる方が多いじゃないですか。それが、プランナーの私に対してだけじゃなくて、「シェフに訊いてみてもらえますか」とか「カイトさんの意見も聞きたいです」とか、MAYAのメンバーにも絡んだものも、けっこうあって。そんなふうに、MAYA全体の意見を求めてくれるお客さまもいらっしゃったりするのが、すごくいいなぁって。
高村
MAYAとしての意見か。たしかにね。
阿部
それは、実は内覧会のときからそうなんです。プランナーだけでなく、誰に相談してもよくて、私は窓口になって、それをまとめる人でいいんだと。
「やらなきゃ」の奥にあるものを探して
高村
アベちゃんがプランナーとして大事にしていることって、どんなこと?
僕は、広告の仕事で何か頼まれたときは、何か「おまけ」をつける感じで、頼まれた以上のプラスアルファを必ず渡そうって決めているのね。アイデアでも、ヴィジュアルの提案でも、1求められたら2返す、みたいに。で、その中に「僕的にはこれがいいと思うので、個人的なものだけど、あえて持ってきました」みたいな感じのものを、いつも入れてる。アベちゃんにも、きっとそういうこだわりがあると思うんだけど。
阿部
そうですね……。よくお客さまに、「これって、やらなきゃいけないんですか?」って訊かれるんですよ。「披露宴では、ゲストにインタビューをするものなんですか?」とか、「スピーチって、絶対にしたほうがいいですか」とか、「ケーキ入刀って、やらなきゃいけないものですか?」とか。でも、絶対にしなくてはならないことなんて、別にないじゃないですか。
高村
うん。
阿部
だから、なんでそれをやるのか。そういうことを、なるべく話すようにしている、とか?
たとえば、ケーキ入刀をなぜやらなきゃいけないと思うかっていうと、別にそれ自体をやりたいわけじゃなくて、やれば盛り上がるだろうとか、皆でひとつのものを囲みたい、一体感がほしいとか、理由があるわけですよね。だから、「やらなきゃ」の裏にあるものを見つけて、その時間や空間をどうやってつくっていくか……。「やらなきゃ」「わかりました」って、単にご用聞きをするだけじゃなくて、お客さま自身がまだ気づいていない思いを引き出してアイデアを提案するのが、プランナーの仕事なんだろうなって。だから、「もっといいことがあるかもしれないですよ?」っていう、そういう話の仕方をしてますね。
高村
それも、すごく広告と似てる……。クライアントに「顧客に向けてCMをつくってほしい」って言われても、よくよく聞いて見ると、だったら別のものを差し上げたほうがいいんじゃないですか?
っていうこと、たくさんあるんだよ。一体感を生むためには、別にケーキじゃなくてもいいんだよ、っていう。ほら、この間も披露宴で鯛の蒸篭蒸しに、ゲストの皆さんがオイルをかけて香りづけをするっていうのをやったじゃない?
あれって、ケーキ入刀と同じだよね。皆で盛り上がれる。
阿部
そうですね。
高村
なぜそれが必要か、そこに立ち返れば、やっぱりやれることはまだまだあって。
阿部
「なんで、いちいちそんなこと訊くの?」って思われるお客さまもいるかもしれないから、そこは難しいところなんですけど……でも、MAYAに来る方には、そういうことを考えるのが楽しいという方が多いような気がします。私も楽しいし。そう、自分だったらやらない、みたいなことを自分を殺して提案するみたいなことがなくて、本当にいいと思うことを話せるのが、MAYAのいいところ。
高村
いいと思ってなくてもやらなきゃいけない、そういうストレスがないのって、幸せだよね。
阿部
うん。自分が本当にいい、おすすめ! って思ってるから、いくらでも語れる。だから、内覧会ではいっつも話が長くなるんです(笑)。
苦手な相手の言葉ほど、よく耳を傾ける
高村
ちょっと意地悪な質問だけど、「この人とは、ちょっと難しいかも」と感じるお客さまがいらっしゃった場合は、どうしてるの? 苦手だなぁ、困ったなって思うときは。
阿部
うーん……(悩む)正直、そういう状況で「解決できた!」って自信を持って言えることは1回もないんですけど。相手が乗ってくれてるかどうか、ずっと不安なので。
高村
アベちゃんでも、そうなんだ。
阿部
私、19くらいからウエディングプランナーのアシスタントに入らせてもらってるので、当たり前だけど、お客さまは皆さん、年上じゃないですか。40代くらいの新郎新婦がいたとして、その人たちに小娘がいろんなことを言うわけで、それはやっぱりすごく難しいし、人として感覚が合わないと……ああ、でも、そういう方が使う言葉ほど、覚えておくようにはしていますね。
高村
へぇー。
阿部
たとえば、何かを褒めるときに「かわいい」って言うのか「きれい」って言うのか、そういう表現の仕方を覚えておいて、それを同じにするとか。それで「あ、この人、私の感覚と合う」って思ってもらえたら、うれしいなと。だから、合わないかもしれないって感じるお客さまとの打ち合わせほど、メモが多くなりますね。
高村
えらいなぁ。僕はメモが減りそう(笑)。
阿部
あと、おふたりが私の前で話した会話の中で、気になったことをメモしておくこと。たとえば、ご家族のどなたかが最近入院されたとか、そういうプライベートなことで、本当は私が聞かなくてもいいことなのかもしれないけど、ちょっと耳に入ったことを覚えておいて、細かい場面で気をつけるようにしておくとか……こんなことでいいんですか?
高村
いいです、いいです。すごく参考になる。
阿部
たぶん、これは普段かやっていることで、友だち関係でもそうかもしれないです。
高村
友だちにも?
阿部
もちろん、身構えなくても一緒にいられる友だちもいますけど、もう、これは性格なのかも。
高村
だから、天職なんだね。本当にサービスが好きなんだ。
阿部
そう……かもしれない。私、友だちに、ずっとウエディングがやりたいって言い続けてきてて、友だちもみんな私がどれだけウエディングが好きかって言うのを知ってるんです。酔っぱらうと仕事の話ばかりして、「ウエディングってこうなんです!」みたいになるらしくって(笑)。だから、お客さまが相手でも、そうなってるのかもしれません。
「そのままでいること」が、仕事になれば
高村
いいと思ってることをそのまま話せて、しかも、それが仕事に活かせてる。最高だね。
阿部
逆に、カイトさん、なんでこんなに自由に言わせてくれるのかなぁって思いますよ。
高村
自由に?
阿部
自分が1からつくったMAYAっていう場所を、私や他の皆に託して、内覧会とかで自由にお客さまに語らせてくれるじゃないですか。何を話しても「それは違う」って言わないし、自由にさせてくれてるなぁって。すごく寛大。
高村
うーん、そう言われてみると……いま思い出したんだけど、やっぱり広告の仕事でも、そういう部分があるんだよね。チームで考えたことをクライアントにプレゼンするじゃない?
そのとき、昔、先輩から言われたんだけど、「企画書に書いてあることを説明するんだったら、企画書を置いてくればいい。お前がどう思ってるのかを言わないと伝わんないよ」って。
阿部
へぇー。
高村
たとえば、MAYAについて話すなら、MAYAのこういうところがいいんだっていうことを、それぞれが自分の言葉で話せないといけないと思う。だって、お客さまを案内して話しているのは、そこにいるその人なんだから。「こう話してね」って言われたことをそのまま伝えるだけだったら、企画書を読み上げてるのと同じでしょ?
正しいかもしれないけど、魅力的だったり感動できるかどうかは、また別の話だと思ってて。だから、アベちゃんも、他の人たちも、「私はここがいいと思ってる」って言ってくれたほうが、聞いてるお客さまも楽しいんだよ。そっちのほうが伝わると思うし、僕はそっちに賭けたい。
阿部
うん。だから、あー、そのままが仕事になるんだって、いつも思うんです。MAYAでは。
高村
ぜひ、これからもそうしてください。そろそろ時間か……アベちゃん、ほかに僕に訊きたいことない? あんまりないよ、こういう機会。
阿部
えー……ちゃんと寝てますか?
高村
寝てますよ! そんなことしかないの? もしかして俺にあんまり興味ない?
阿部
アハハ! なんか、寝てるところが想像できなくて。でも、それならよかったです。
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